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大阪高等裁判所 昭和38年(ツ)41号 判決 1964年1月25日

上告人 岩本昌男こと 岩本正夫

右訴訟代理人弁護士 吉田朝彦

被上告人 鳥居友一

右訴訟代理人弁護士 加堂正一

主文

原判決を破棄する。

本件を大阪地方裁判所に差戻す。

理由

上告代理人の上告理由は、別紙のとおりである。

上告理由第一点について

原審は、本件使用貸借契約は、上告人が将来九条会館に入居できるか、または右入居が不可能と確定するまでの間存続するものと解し、上告人の右入居が不可能ときまつた以上、本件使用貸借契約は終了したと判示している。ところで、原審は、本件使用貸借契約成立の経緯として、(一)上告人は訴外鳥居建設工業株式会社が建設中の九条会館(三階建)の階下店舗二室につき、訴外竹田安浩との間に、昭和二六年九月三〇日、保証金三六万円、賃料一ヵ月四、〇〇〇円と定めて賃借する旨の契約をなし、契約と同時に手附金八万円、同年一〇月一日保証金の内金として金一〇万円を支払い、同年一〇月五日引渡の予定であつたこと、(二)しかるに、その敷地所有者の訴外神野幸男が右訴外会社を相手方として、右九条会館の建物への立入禁止の仮処分を執行したため、上告人は、右建物への入居が不能となり、しかも従前居住の家屋を売却処分していたために、たちまち居住家屋にさえ窮するにいたつたので、被上告人の主宰する右訴外会社は、上告人に対する前記竹田安浩の右契約上の地位を引継ぎ、同年一一月一三日、上告人との間に、「前記仮処分が解決して立入禁止が解除されたときは、上告人が九条会館に入居することを承認する。上告人の右入居が不能となつた場合は上告人が前記竹田に支払いずみの金一八万円を直ちに返還することなどを定めた契約書を作成し、(三)その際、本件使用貸借契約が成立したことを判示している。右事実関係に照らすと、上告人が将来九条会館に入居できる場合には、被上告人は、みずから主宰する前記訴外会社が右賃貸借契約上の引渡義務を履行するまで、上告人に本件建物を無償で使用させなければならないものと解するのが相当であつて、この点に関する原判決の判断は正当である。しかしながら、上告人が将来九条会館に入居できないことが確定した場合に、被上告人は、右訴外会社が右賃貸借契約上の引渡義務の履行不能にともなう約定義務を履行しないにかかわらず、右引渡義務の履行不能の一事によつて直ちに本件使用貸借契約が終了するものとして、上告人に本件建物の明渡を請求できるものと解することは、彼此著しく権衡を失する。本件使用貸借契約は、後者の場合には、右訴外会社が前記引渡義務の履行不能にともなう約定義務を履行するまでの間、上告人が本件建物を使用できる趣旨であると解するのを相当とする。原判決には、この点につき契約の解釈を誤まつた違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすものと認められるから、破棄を免れない。

同第二点について

この点に関する上告人の所論は、上告人が原審において主張しなかつたことを前提とするものであつて、原判決に所論の違法は認められない。

よつて、民事訴訟法四〇七条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 入江菊之助 判事 木下忠良 中島孝信)

<以下省略>

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